積の微分法の多項積への拡張#
高校で学ぶ積の微分法(積の法則)は通常2つの積までですが、実際には3つ以上の積にも自然に拡張できます。本記事では、その考え方と一般公式をわかりやすく解説し、最後に演習問題も用意しました。
基本の積の微分法#
まず、基本のおさらいです。2つの関数 u(x),v(x) の積の微分は次のようになります。
(uv)′=u′v+uv′これは「片方ずつ微分して、それぞれ和を取る」という形です。
3つの積の場合#
次に3つの積を考えます。u(x),v(x),w(x) の積 f(x)=u(x)v(x)w(x) の微分は次の通りです。
f′(x)=u′(x)v(x)w(x)+u(x)v′(x)w(x)+u(x)v(x)w′(x)つまり、各項で1つだけ微分して、残りはそのまま掛ける というルールが成り立ちます。
4つ以上でも同様#
例えば、4つの積 f(x)=a(x)b(x)c(x)d(x) ならば
f′(x)=a′(x)b(x)c(x)d(x)+a(x)b′(x)c(x)d(x)+a(x)b(x)c′(x)d(x)+a(x)b(x)c(x)d′(x)と展開できます。
一般公式#
一般に、n 個の関数 u1(x),u2(x),…,un(x) の積
f(x)=i=1∏nui(x)を微分すると、
f′(x)=k=1∑nuk′(x)j=1j=k∏nuj(x)となります。
演習問題#
文系向け(数II範囲)#
問題1
次の関数を微分せよ。
f(x)=x(x+1)(x−2)理系向け(数III範囲)#
問題2
次の関数を微分せよ。
g(x)=x2⋅ex⋅sinx
問題1 解答#
まず積のまま微分しても良いが、展開してから微分してもよい。
展開:
f(x)=x(x+1)(x−2)=x(x2−x−2)=x3−x2−2x微分:
f′(x)=3x2−2x−2積の微分法をそのまま使うと:
f′(x)=1⋅(x+1)(x−2)+x⋅1⋅(x−2)+x⋅(x+1)⋅1それぞれ計算しても同じ答えに到達します。
問題2 解答#
各項の微分は:
- x2 → 2x
- ex → ex
- sinx → cosx
よって
g′(x)=(2x)exsinx+x2excosx+x2exsinx整理すると
g′(x)=ex((2x+x2)sinx+x2cosx)
ポイントは「誰か1人だけ微分して、残りはそのまま掛ける」を繰り返すことです。